盛り上がる「休み方改革」気運への違和感

コラム&インタビュー

仕事を時間や場所で管理する発想からの転換が必要

私は、そもそも労働時間によって従業員を管理する・管理されるという企業・組織のあり方そのものがもはや時代遅れだと考えています。もちろん、不当な長時間労働や過重労働は看過できません。しかし、労働時間の長さイコール労働生産性の高さでないことは既に論じられているものの、実際には多くの企業経営者・管理者や従業員自身も、その価値観や行動パターンから抜け出せていません。

そもそも仕事の生産性とは、付加価値を生み出すこと=お客様や社会のお役に立つことが本質ですから、どれだけ仕事に時間を費やしたか、職場のデスクに身を置いていたかは重要ではありません。昭和の製造業の工場現場中心の働き方であれば、一定技能の従業員が一定時間働くことで労働生産性を測ることが可能でした。しかし、既に産業構造の7割をサービス業が占め、また第2次産業でも工場の海外移転が進み国内ではホワイトカラー比率が高まる現在、もはや労働時間=生産性ではありません。顧客満足のためには創意工夫こそが重要であり、組織・事業の不断のイノベーションが求められるのです。

すなわち、日本企業には、労働時間の長さや働く場所で仕事や従業員を管理する発想からの転換が迫られているのです。

ワーケーションやテレワークを体験することの価値

しかし、労働時間による管理からの脱却はブラック労働を助長してしまうと、従業員保護の観点から抵抗が強く、法制度上で直ちに実現することは難しい状態です。そこで、私はこのワーケーションの活用や一斉テレワークの試みなどは、根本的改革ではないまでも、働く価値観を転換するきっかけになるものとして期待しています。職場でデスクにかじりついていることだけが仕事ではない、職場で過ごす時間の長さがイコール仕事の生産性の高さではないということを実感できる、よい機会になり得るからです。

テレワーク体験については、先日、弊社が企画した人事部門責任者向けセミナーでご登壇頂いた新興成長企業の人事部長のお話が印象的でした。その方は自称ワーカホリックで、職場に来ないで仕事をするなどナンセンスだと考えていたとのこと。ところが、ご自身にお子さんが生まれ自ら育休やテレワークを活用した働き方を経験してみて、考え方が一変したといいます。今やスカイプやチャットなどICTが発達しており、在宅で仕事をこなし部下たちと遠隔でコミュニケーションをとることに何らストレスがなく、むしろ仕事が効率的に進むことを実感したというのです。そして、逆に会社に出勤すること自体にどういう意味があるのだろうか?と思案してしまったということです。

角度を変えて考えると、サービス業にしてもホワイトカラーにしても、これまでの固定観念やビジネスの手法を乗り越えてイノベーションをめざすには、1つの「会社村」の中で同じメンバーと働くだけでは限界があります。そこで、異なる環境や文化のなかに身を置き、職場や仕事の枠に止まらない多様な人と接し、またリゾート地や自然の中でリフレッシュすることで、新たな発想やアイディアが生み出される可能性が高いとも考えられるのです。