社員の国籍は20カ国近く。「バックパッカー精神」あふれる留学生を世界的企業から引き抜かれるITエンジニアへ育成/㈱アレックスソリューションズ-前編

コラム&インタビュー
株式会社アレックスソリューションズ
語学力に長けたITエンジニアを育成し、顧客企業に常駐して海外企業との橋渡し役を担うグローバルエンジニアリング事業、および顧客企業の海外進出をサポートする海外研修事業で成長を続けるIT企業。代表取締役CEOの大野雅宏氏が同社を設立したのは2007年。当初から「留学生を活かす」を経営理念として掲げ、留学経験者や海外経験者、日本に留学してきた外国人に絞って社員を採用することで、独自の強みを伸ばしてきた。東京港区の本社のほか、シンガポール、スリランカにもオフィスを持つ。2018年5月時点での社員数は153人。社員の国籍は、日本、アメリカ、韓国、中国、インド、スリランカ、ネパール、ブラジル、 ナイジェリア、イギリス、フランス、シンガポール、ベトナム、バングラデシュ、フィリピン、マレーシア、ドイツ、ミャンマーと実に多様。

就職で評価されなかった悔しさが原点。経営理念は「留学生を活かす」

「留学生を活かす」。アレックスソリューションズのこのユニークな経営理念は、大野雅宏代表の個人的な経験にルーツがある。

「大学生時代にエジプトのアレクサンドリア大学に2年間ほど留学し、帰国後は留学で身につけた語学力を活かして働こうと考えていたんです。ところが、就職活動をしても、留学経験をなかなか評価してもらえず、希望する就職はできませんでした。このときの悔しい思いが当社の事業の原点です」

大学卒業後、塾講師として働いていた大野代表は、その後友人の誘いでIT企業の営業職に就く。その営業活動の中で、顧客から「英語ができるITエンジニアはいない?」と打診される機会が頻繁にあった。しかし、該当する人材は数が少なく、いたとしても料金が高い。一方、大野代表自身がそうだったように、留学などの海外経験はあっても、希望する就職ができずに、フリーターなどでくすぶっている若者は世の中にたくさんいる。また、語学力が活かせると思って就職したものの、その機会が実際にはほとんどなく、転職を考えている層も少なくない。大野代表はここにビジネスチャンスを見出した。

「海外大学への正規の留学でなくても、短期大学への留学やワーキングホリデー、バックパッカー、あるいはJICAの青年海外協力隊などで海外経験を重ねた人たちは、現地の人と込み入った交渉もできるくらいの活きたコミュニケーション力を習得しています。語学力やバイタリティという点では十分通用する潜在能力を持っている。しかし、彼らにはビジネス経験がなく、当然ながらITスキルもありません。それなら、そこを研修で補おうと」

基本的なビジネスマナーとITスキルなら、集中して意欲的に学べば短期間で身につけることは可能。そう考えた大野代表は、ITスキルは問わず、留学・海外経験のある人材を募集。CCNAというネットワーク技術に関する資格取得とビジネスマナーの修得、また、留学から期間が経っている人のために英語力の回復を図る夜間9週間の研修プログラムを作成し、内定者に入社前受講させる。内定者からすると無料で研修が受講でき、会社側からすると研修期間は給料負担がないWin-Winの仕組みだ。当時は海外にサーバーを置く企業が増えている時期で、トラブルがあった際などは現地のエンジニアと国内のエンジニアが英語でやり取りをする必要が生じる。これに対応する仕事であれば、それほど高度なIT知識は必要とされない。むしろ求められるのは語学力だ。大野代表は当初はこの業務にターゲットを絞って営業。その狙いは当たった。