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新卒一括採用から通年採用へ移行する先にあるもの 第1回:通年採用化の背景と企業の未来/編集長・前川孝雄の「人が育つ現場論」

経団連が通年採用への方針転換を発表

新年度を迎えた4月に、経団連と大学関係者との合意により、企業による新卒一括採用を見直し、通年採用に移行する方針が発表されました。従来の経団連主導による就職協定は、これまで時期が二転三転してきましたが、直近では企業の採用広報活動が大学3年の3月解禁、採用面接など選考活動が大学4年の6月解禁に落ち着いていました。経団連は昨年10月にこのルールを2021年採用以降廃止するとしましたが、政府がこれを引き取り、2021年春入社は政府方針でこのルールを継続することとしました。いずれにせよ、この時期を境に通年採用が本格化することが予想されます。

実際に通年採用への移行となれば、各社それぞれが採用計画を立て実行していくことになり、これまで毎年計画的に新卒採用を行ってきた大企業の採用現場や、これに次ぐ時期に採用を計画してきた中小企業が混乱を来すことでしょう。また大学生も就職活動のタイミングの目安がもてず、これを支援する大学のキャリアセンターなども対応に苦慮するでしょう。短期的なこととはいえ、こうした混乱は避けられません。しかし、変化の本質は採用時期の話ではありません。

企業に鬱積する不満と危機感

この通年採用への動きの背景・理由には、いくつかの要因が考えられます。

一つは、経団連の会員企業からの不満です。会員企業がいくら従来の紳士協定を遵守しても、会員外の外資系企業や新興企業などが優秀層を青田買いしていく実態がありました。少子高齢化で益々希少になる若手ポテンシャル人材を早期に囲い込まれてしまうことへの忸怩たる思いもありました。

もう一つは、日本の教育界に対して溜まっている企業側の不満です。企業はグローバル競争の波に飲まれ、欧米・中国・アジア等の企業との峻烈な競争に晒されています。グローバルでは新卒一括採用は少なく通年採用が一般的で、育成を前提としたポテンシャル採用ではなく、即戦力を求めるジョブ型採用です。すなわち、「ジョブ(仕事)ごとに求められる職務要件を定め、このスキルで、この時期だけ、このエリアで働ける人材がほしい」というスピィーディで効率を重視する雇用です。

例えば、グローバルで急成長中のNETFLIXは必要な時に必要な人材をその都度一気に採用し、プロジエクトが完了すれば契約を終える形で事業を拡大しています。同社の元最高人事責任者だったマッコード・パティは著書『NETFLIXの最強人事戦略』(光文社)のなかで、こう述べています。

「一つ、優れた人材の採用と従業員の解雇は、主に、マネジャーの責任である。二つ、すべての職務にまずまずの人材ではなく、最適な人材を採用するように努めること。三つ、どんなに優れた人材でも、会社が必要とする職務にスキルが合っていないと判断すれば、進んで解雇すること」

こうした競争相手と戦うためには、日本流の新卒一括採用と息の長い人材育成では勝ち目がないとの思いが強いのです。そこで、企業は教育界に対し、すぐに役立たない教養教育よりも、AIやフィンテックなどの最先端の知識やスキルを有する即戦力人材を育てることを強く迫っています。この要請に政府も呼応せざるをえず、企業活動にすぐに役立つ知識・スキルを学校教育でも身につけるべきと提唱し始めました。この度の通年採用化への動きには主にこうした背景が見られますが、要するに経団連・大企業側の「欲しい即戦力人材を欲しい時に採り、解雇したい時に解雇したい」という思惑が透けて見えるのです。

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