上意下達のマネジメントを劇的に変えた管理職向け研修とは?/日本郵便㈱-後編

コラム&インタビュー
日本郵便株式会社
2007年の民営化にて、日本郵政グループ(日本郵政株式会社、郵便事業株式会社、郵便局株式会社、株式会社ゆうちょ銀行、株式会社かんぽ生命保険)が発足した後、2012年の郵便事業株式会社と郵便局株式会社の合併を経て、日本郵便株式会社が誕生。主に、国内・国外郵便サービスを提供する郵便事業、ゆうパック・ゆうメールなどの荷物運送サービスを行う物流事業、アジアを中心とした国際物流事業、銀行や保険をはじめとする金融窓口事業などを展開している。現在、社員は約40万人(期間雇用社員含む)、管理職層は約3万人にのぼる(2019年1月現在)。

「やらされ感」では、人は動かない。部下のモチベーションを上げるために、まずは「話を聞ききる」ことからはじめた

実際に研修へ参加した局長は、「一人ひとりを大切にするマネジメント」というメッセージをどのように受け止めたのか。

「正直、当初は研修参加に対して後ろ向きでした」。柿生郵便局局長の濵田英明氏は、当時の偽らざる心境をそう振り返る。しかし、そんな濵田氏も、今ではこの研修の価値を強く実感しているという。

「研修参加前は、ちょうど部下指導に悩んでいた時期だったんです。営業成績が振るわない部下たちに改善策を指示すると、一定期間は実践してくれるもののどこか『やらされ感』があり、なかなかその行動が持続しない。そして、そんな部下たちを強く指導すればするほど、彼らのモチベーションを低下させてしまう……。ですので、そのタイミングで現場を離れるのはかなり不安でしたし、抵抗感がありました」

しかし、研修にて「自分に指を向けてみなさい」という趣旨の講義を聞き、濵田氏は自身のマネジメントにおける大切な気付きを得たという。

「私はずっと『なぜ部下は成績を上げられないのか?』『なぜやると決めた行動を続けられないのか?』とばかり考えていました。部下の営業成績が上がらないのは、すべて『部下のせい』だと思い込んでいたんです。でも、講義を聞いて、『部下ができない』のではなく、『私が、部下ができるように支援していない』のだと、捉え方が変わったんです」

そう考えた濵田氏が現場に戻ってまず実践したのは、「部下の考えをしっかり聞ききる」こと。これまで部下の考えを聞くより先に、自分の意見を押し付けていたという反省があったからだ。

「そこで、部下が課題に直面したときには、私から『こうしろ』と指示するのではなく、まず部下に『どうしたい?』『どうしたら良いと思う?』と意見を求めるようにしたんです。最初は自分の意見を抑えることに、もどかしさや戸惑いを感じました。でも、続けていくうちに、部下たちが自ら決めた方向性に向かって、主体的に考え動いてくれるようになり、徐々に『やらされ感』が払拭されていくのを感じたんです」

しかし、単発のアプローチでは、部下のやる気は継続しない。濵田氏はこれからも部下と話す時間を意識的に設け、長期的な働きかけを続けたいと意気込んでいる。

「せっかく向上した部下のモチベーションも、1カ月もすればまた低下してしまう。できる限り期間を空けずに、長い目で支援をすることが、部下の長期的なモチベーション維持につながると思っています。今回の研修を通して、相手にばかり原因を求めていた自分に気付けました。これだけでも、参加した意義があったと思います。今後もこの気付きを忘れずに、相手の意見や考えを尊重したマネジメントを心掛けたいと思います」