55歳でキャリア官僚からNPO代表に。「やりたいこと」はアクションを起こすことで見えてくる/NPO法人農商工連携サポートセンター代表理事 大塚洋一郎氏

コラム&インタビュー

役職定年制度や定年延長制度を採用する企業が増加するなか、「働かないオジサン」「社内失業する中高年」といった言葉がメディアを飛び交い、ミドル・シニア(40代後半~50代)のモチベーション、パフォーマンスの低迷を問題視する風潮が高まっています。このようなミドル・シニア問題を生む要因はどこにあるのか? ミドル・シニア社員本人、制度・研修など施策を講じる人事担当者、現場をマネジメントする管理職、それぞれに求められることは何か? 本連載では、有識者・経営者が独自の視点から、ミドル・シニア活躍の実現に向けた提言を行います。

連載第3回の提言者は大塚洋一郎氏。バリバリのキャリア官僚でありながら、55歳で早期退職。「農商工連携・6次産業化・都市農村交流による地域活性化」にライフワークとして取り組むべく、NPO法人農商工連携サポートセンターを設立した社会起業家です。そんな大塚氏に、起業までの道のりと現在に至るまでの紆余曲折、中高年がセカンドキャリアで新たなチャレンジをする上での心構えなどをお話いただきました。

 

  国家公務員時代はどのような職務に携わってこられたのでしょうか?

大塚 旧科学技術庁で10年ほど原子力行政に関わった後、文部科学省(2001年の中央省庁再編で旧文部省と旧科学技術庁が統合)で宇宙開発や海洋開発を担当しました。宇宙開発では小惑星探査機「はやぶさ1号」や人工衛星打ち上げ用液体燃料ロケット「H-Ⅱロケット」の打ち上げ、海洋開発では地球深部探査船「ちきゅう」の建造に関わりました。

  その後、経済産業省で大臣官房審議官を務められていますね。

大塚 2007年に省庁間の人事交流で着任しました。そこで、後に起業のテーマにもなる、農林漁業者と商工業者(食品産業など)の連携による新事業展開を支援するための法案「農商工連携促進法」の制定・運用を担当しました。

  ご経歴を伺っただけでも、国家公務員として充実したキャリアを歩んでこられたことが伝わってきます。その大塚さんが、なぜ早期退職を?

大塚 正直なところ、審議官になってから、仕事が面白くなくなってしまったんです。審議官は民間企業で言えば、本部長とか取締役クラスの職位なので、専用の個室や車をいただいたり、秘書がついたり、待遇はとても良かった。でも、メインの仕事は国会議員まわり。要は先生方への根回しです。それはそれで重要な役割ではあるのですが、どうにも性に合わなかった。現場で感じていたやりがいや手応えみたいなものが感じられなくなってしまいました。

また、ある日、与党の部会へ法案の説明に出向いたところ、私たちの前に説明に入っていた厚生労働省の幹部がどす黒い鬼のような表情で出てきたんです。当時、「消えた年金問題」で大騒ぎになっていましたら、相当厳しく追及されたのでしょう。その姿を見たときに、「もう役人は辞めよう」と決心しました。「自分のやりたいことはこんなことじゃない」と直感的に思ったんです。