建前だらけの外国人技能実習制度を廃し、人材開国へ舵を切れ (後編)外国の若者も人間尊重の姿勢で愛情をもって育てる

コラム&インタビュー

経営者・管理者は人間尊重の姿勢で受け入れる

では、日本企業は外国人材をどのように受け入れるべきでしょうか。技能実習制度が残る現状を踏まえて考えてみましょう。

当然のことですが、外国人の若者を「安く入れ替わりのきく都合のよい一労働力」などと見ることなく、人格と感情を持つ一人の人として尊重する姿勢で受け入れることが大切です。そもそも言語も文化も異なる異国に単身で飛び込み、相談相手もいない心細い環境で働き、生活もしていくのです。日本の若者以上により丁寧に受け入れ、育てていく心構えが不可欠です。

私は、さらに技能実習制度の課題把握のために、実習生を受け入れる中小企業経営者の思いや現状も取材しました。そこから見えるのは、各国の若者には日本と異なるその国固有の文化的背景があり、その特性をきちんと理解し配慮する必要があることです。と同時に、実習生一人ひとりが異なる個性や資質をもっており、就労動機や意欲の違いもあり、その点も丁寧に見極めていくことが大切なことです。少し考えればしごく当然のことです。

異文化理解力を身につける

また、日本の職場では同質性の高い文化を背景に従業員同士が「あうんの呼吸」で仕事をしており、「この程度のことは何度も言わなくても判るだろう」と考えがちです。しかし、外国人材の場合には、文化や習慣の違いを前提に、必要なことは何度も繰り返し説明して理解を促すことが大切です。

ベトナム現地でお会いした日本人経営者が象徴的な例を話してくれました。ベトナムの若者が出勤時に5分遅刻してきたのを叱責したところ、「社長は昨日の5分残業は怒らなかったのに、5分遅刻だけ怒るのはおかしい。5分は残業できちんと働くから問題ない」と言われ、とっさに返す言葉がなかったと言います。本人は何ら悪気はなく、よって立つ文化が異なるということです。したがって、必要なルールはきちんと明文化し、その理由や運用を相手が理解できるまで何度も繰り返し丁寧に説明するなど、しっかり意思疎通しなければならないのです。

多文化の人たちと共に働くための参考書として、エリン・メイヤー著『異文化理解力』(樋口武志訳、英治出版)はとても役立つ良書です。同書によると、日本はハイコンテクストの文化、即ちコミュニケーションには含みが多く、メッセージを行間で伝えがちだといいます。確かに日本語は漢字、ひらがな、カタカナと表記が多様なうえに、形容詞や敬語の使い方も複雑で、文脈やKY(空気を読むこと)が重視されるなど、外国人からは理解しにくい言語や文化だと言えるでしょう。

しかし、こうしたハイコンテクスト文化の日本だからこそ、多様な文化の人たちと共に働くためには、ローコンテクストなシンプルで明快なコミュニケーションや、職場ルールの共有が大切なのです。今後の企業経営において、異文化理解力は必須の能力となってくるでしょう。