評価ではなくゴールセッティングとフィードバック。オープンコミュニケーションで、一人ひとりが才能を発揮できる/株式会社ユーザベースー前編

コラム&インタビュー

人材育成企業FeelWorks代表取締役の前川孝雄が、先進的な人材育成の取り組みをしている企業のトップと「これからの人材育成」をテーマに対談する本連載。第4回となる今回は、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」をはじめ、7つのグループ会社を擁し、急成長を続ける株式会社ユーザベースを訪問。同社の先進的な人材育成、組織運営に関して、カルチャーチームでHead of Culture&Talentを務める西野雄介氏、Learning&Development Managerの宮原詩織氏にお話を伺いました。

「ミッション」を共有することでグループ各社を一枚岩に

前川:NewsPicksやSPEEDAを運営している御社には、既存のメディアでキャリアを重ねたジャーナリストやIT業界出身のエンジニアなどさまざまな人材が集まってくると思います。この多様なメンバーを一枚岩にして急成長を遂げるのは大変だと思うのですが、御社ではどのような工夫をされているんですか?

西野:基本は「ミッション」ですね。「経済情報で、世界を変える」というミッションが、唯一我々のグループを一つにしているものなんです。一方で、「バリュー」というのもあるんですけど、これに関しては昨年、グループ各社がバリューを個別で持つことがありかなしかということが議論になりました。

前川:御社が掲げる「7つのバリュー」ですね。「自由主義でいこう」「創造性がなければ意味がない」「ユーザーの理想から始める」「スピードで驚かす」「迷ったら挑戦する道を選ぶ」「渦中の友を助ける」「異能は才能」。素晴らしいバリューだと思いますが、今まではこれもグループで共有していたということですね。

西野:その通りです。ミッションとバリューが共通だから我々は一つなんだという考え方があったんです。ところが、成長の過程で我々もいろいろな経験を重ねました。例えば、昨年、FORCASという事業が立ち上がって、CEOが、7つのバリューとは別に「オープンと共創」というバリューを掲げました。また、最近買収したアメリカのQuartz Media, Inc.も、もともと私たちに近いバリューを持っていたのですが、近いと言っても中身に違いはあります。そうなったときにユーザベースのバリューを各社に押し付けるのが正しいのかどうかということを話し合ったんです。

前川:いろいろな記事を拝見していると、御社は、最初は勢いで成長していったけども、それだけではうまくいかなくなったときに7つのバリューを作ることで再びまとまりを得たということですよね。それだけバリューはグループにとって大切なものだったと思うのですが、議論の結果はどうなったのですか?

西野:強制はしないということにしました。もちろん、それによってバラバラになってしまうのではないか、まったく違う価値観のものが入ってきたらどうなるのかといった意見も出ました。とはいえ、FORCASのような会社はもともとの同じカルチャーで育った親子関係みたいなものですし、ミッションやバリューが離れた会社を買収することもないだろうということになったんです。ただし、原則として「バリューを持つこと」「7つのバリューをリスペクトすること」、この2つは守ってほしいということにしました。あとは自由でいいと。

前川:そういう経営の根幹となる議論は全社巻き込んで行うのですか?

西野:そうです。それが大事なところですね。グループのトップだけで決めてドーンと落とすのではなく、徹底した話し合いによってものごとを決めるというのが当社のやり方です。