50代からの働き方を考えるシンポジウム バブル世代のキャリアシフト ~ミドルの覚醒が会社を元気にする~/㈱FeelWorks主催シンポジウムレポート

コラム&インタビュー

ソニー株式会社 ●人生100年時代に向けたベテラン・シニア社員のキャリア支援施策「キャリア・カンバス・プログラム」

次のキャリアも見据えてベテラン社員の新たな挑戦や学び直しを支援

続いて登壇したのは、ソニーの大塚康氏。50歳以上の社員の比率が約3割となるソニーでは、ベテラン社員の活躍を支援するため、2017年5月から、多角的な取り組みを包括した「キャリア・カンバス・プログラム」をスタートしている。

「ソニーのキャリアに対する考え方は『自分のキャリアは自分で築く』です。トップダウンではなくボトムアップ的に、社員が自分で自分のキャリアを決めていくという風土が比較的定着しています」(大塚氏)

キャリア・カンバス・プログラムもこの考え方に基づき、「ベテラン社員のキャリア自律」をベースに組み立てられている。その全体像は次の通りだ。

「軸となるのは『新しい分野への挑戦』と『学び直し』の支援です。そのためのマインドをキャリア研修、メンター制度、社内分科会といった取り組みで下支えします。これらによって、ソニーで活き活きと働きながら将来の資産形成をし、各自のキャリア・ライフに合ったタイミングで『次のキャリア』へとつなげていきます」(大塚氏)

このように同プログラムは社内での活躍支援だけでは完結せず、多様な「次のキャリア」を想定している。再雇用を選択して60歳の定年以降もソニーで働く道もあれば、独立起業・個人事業主、他社就職、趣味・ライフの充実といった道もある。重視されているのは、それぞれの価値観、キャリア観に基づいて、一人ひとりが自主的に次のキャリアを構想すること、そのための力を養うことだ。「次のキャリア」は必ずしも60歳の定年以降と定められているわけではない。いつ「次のキャリア」に踏み出すかもその人次第だからだ。

また、社員へのアナウンス方法についても、「いろいろな制度を作りました」ということではなく、会社からのメッセージとともに全体をパッケージとして打ち出している点も本施策の特徴であると大塚氏は語った。

自分のポータブルスキルを発見してもらえるキャリアリンク

では、具体的にはどのような施策が行われているのだろうか。「新しい分野への挑戦」に関しては、社内公募制度は以前からあったが、新たに加わったのが、「キャリアプラス(兼務・PJ型募集)」「キャリアリンク(キャリア登録制度)」の2つだ。

「キャリアプラスは、社内兼業を前提として募集を行い、合格したら現在の仕事を続けながら新しい仕事にもチャレンジできるという制度です。一方、キャリアリンクは、社員が自分のレジュメを全社に公開し、興味をもった部署やプロジェクトから引っ張ってもらうというもの。ベテラン社員はさまざまなポータブルスキルをもっていますが、自分がどのような場所で活躍できるのか、なかなか自分ではイメージが湧かない面もあることから設けた制度です」(大塚氏)

「学び直し」に関しては、50歳以上の正規社員に学び直しの資金として10万円を支給する「Re-Creationファンド」を新設。「今後のキャリア作り」を目的としているため、学ぶ内容については現在の業務との関連は問わない。

「新キャリア研修」は、50代前半、57歳といったタイミングで、キャリアプラン・ライフプランを考える研修を行うのだが、このプログラムで特徴的なのは、研修後、全員に社内メンターをつけてフォローアップしている点。キャリアメンターはキャリアカウンセリング資格を取得した管理職経験者などが務め、上司・人事とは別軸で相談に乗る体制を作っている。なお、このキャリアメンターもキャリアプラスで募集している。

「社内分科活動」とは、「ボトムアップ活動」と称されるサークル活動のこと。ベテラン社員が興味・関心があるテーマのもとに横につながり、自主的に活動する勉強会や他社との異業種交流会などの活動に取り組んでいる。

「当社が大切にしているのは自律です。自律は上から押しつけることはできません。そのため、キャリア・カンバス・プログラムでは、会社の意思を強く打ち出すということではなく、社員の人一人ひとりの意識が広がっていくことを第一に考え、その結果が会社にとってもプラスになるというかたちを理想として目指しています」(大塚氏)