残業少なく働きやすいのに、社員が暗い原因は社長にあった!? 本当の「働く女性の幸せ」実現ドキュメント/㈱ランクアップ-後編

コラム&インタビュー
株式会社ランクアップ
2005年、広告代理店を退職した岩崎裕美子社長が「自分が本当に欲しい化粧品を作りたい」との思いを抱いて創業。「美容液で化粧を落とす」という業界の常識を覆す発想から生まれた感動化粧品マナラ「ホットクレンジングゲル」は発売から15年で1,000万本(2018年6月現在)を売り上げる大ヒット商品となり、会社全体の売上高も14期連続で上昇中。第14期は103億円(2018年9月期国内通販売上)に達した。働くママをサポートする社内制度の充実ぶりでも知られており、2013年には、東京ワークライフバランス「育児・介護休業制度充実部門」認定企業に選出。岩崎社長の経営哲学とランクアップの成長史は著書『ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社』(クロスメディア・パブリッシング)にもまとめられている。社員数は57人(2018年11月現在、アルバイトを含む)。

人事評価制度からもうかがえる「挑戦」のスピリット

「挑戦」の価値観は、人事評価制度にも表れている。1年前、同社は評価の指標として「役割定義」を導入した。役割定義といえば、一般的には役割等級制度において「等級ごとにどのような役割が求められているのか」を言語化したものだが、ランクアップの役割定義は一味違う。等級ごとではなく、一人の社員ごとに求める役割を設定しており、その内容はかなり具体的な行動レベルにまで落とし込まれている。そして、注目すべきはそれらの「合格ライン」である。

「たとえば、総務部の社員の役割の一つに、『オフィス環境の改革をする』という項目があります。達成可否の基準となるのは、全社員に対して実施するオフィス満足度についてのアンケートです。平均満足度が『90%』に達すれば、その項目は評価の対象となります。」

平均満足度8割台で評価対象にならないというのは、かなりシビアな指標のように感じる。しかし、広報部の近藤良美さん(写真右)は「厳しいと感じたことはない」と言う。

「『挑戦』の風土が浸透しているので、『目標が高いほど挑戦し甲斐がある』という社員が多いです。また、数か月後にその目標を達成するため、今日やるべきことが明確になるので、目の前の仕事へのモチベーションも保ちやすくなります。」

さらにもう一つ、同社の人事評価制度で特徴的なのは、上司と部下の面談頻度だ。「役割定義」の設定と見直しを行う面談を半年に1回、目標に対する達成度合いを報告する面談を月に1回、1週間の進捗を共有する面談を週に1回実施している。面談を複数回設けることで、意識的に上司と部下がコミュニケーションをとる機会を創出しているのだ。

上司と部下のコミュニケーションが希薄になると、部下の人事評価に対する疑念・不満や仕事に対するモチベーションの低下を招きかねない。同社は「働くママ」が社員の半数を占め、限られた時間の中で成果を出すことが求められている。なおさらその危機感は強いのだろう。現行の面談頻度で十分のように感じるが、ランクアップは現状に安住することはない。

「現行の面談では、部下の日常的な仕事の進捗は共有できるものの、一人ひとりの中長期的なキャリアについて話し合う時間がとれないという課題がありました。社員からの提案もあり、現状に加えて『3か月に1回の面談』の導入を今まさに進めているところです」(岩崎社長)

常に問題意識を持ち発信する社員たちと、それに呼応して即座に改善を試みる会社――スピード感のある両者の連携によって、ランクアップの人事評価制度は今この瞬間にも変化し続けている。