建前だらけの外国人技能実習制度を廃し、人材開国へ舵を切れ (前編)技能実習制度の問題と実状

コラム&インタビュー

多発する技能実習生をめぐる問題

外国人技能実習生の失踪や、不正な在留資格の取り消しなど、問題が相次いでいます。

2018年12月末時点の在留外国人は273万1,093人。このうち技能実習生は32万8,360人を占め、約12%のボリュームに達していて、ここ4年間で2倍に増えたとされます。しかしその実状には、本人希望とは異なる業務や低賃金の違法な長時間労働を強いられるブラックな労働環境に置かれている例もあります。さらに驚くことに、2013年から2017年までの5年間で延べ2万6千人が失踪しているとのこと。政府もやっとこうした実態の把握や、環境改善に乗り出すに至りました(日経新聞、8月8日)。

また、法務省の発表では、出入国管理法に基づく2018年の在留資格取り消しは832件で、前年の2倍で過去最多。在留資格別では412件の「留学」が最も多く、これに次ぐ153件が「技能実習」とのことです(日経新聞、8月21日)。取り消し理由で多いものは、留学先学校を除籍になっても3か月以上在留(実際は就労等)している例や、稼働していない会社を実習先として在留資格を申請していたケースなど。つまり、「留学」や「技能実習」を名目に、次なる不安定就労のステージに流れている例が少なくないのです。

技能実習制度の建前と本音

日本の外国人技能実習制度は1993年に始まり、主に途上国への技術協力や国際貢献を目的に、日本の労働現場に外国人労働者を受け入れ、技能を習得・向上して母国に持ち帰ってもらい、本人の就業促進と母国の産業発展に貢献するというものでした。しかし、今や、この目的は建前に過ぎません。

ここまで技能実習生が増えた働く現場の本音は人材不足です。ここ10年ほどで少子高齢化と労働力人口不足が顕在化し、特に日本の若者の多くが好まない中小企業の製造現場や過酷な建設現場や介護職場などでは、仕事はあっても人が採用できず事業の継続が難しくなり、外国人技能実習生の労働力にすがっているのが実態です。こうした不人気職種を中心に外国人労働力を充ててきたのが、技能実習制度の本音と言えるでしょう。ただし、日本にやってくる外国人の若者も母国より稼げると思ってやってくる場合がほとんどで、日本企業も労働力として受け入れている場合がほとんどです。にも関わらず、建前がまかり通っているのはなぜでしょうか。それは、外国人労働者が増えることにネガティブな国内世論です。そのため政府も、研究者や経営者など高度人材以外の一般ワーカーとして外国人労働者を受け入れはしないという建前を保つために、国際協力・貢献に向けた3年間だけ技能実習の形で受け入れる形式に留めてきたものです。

ただ、労働力不足の困窮度合いは深刻化する一方で、やむを得ず政府は実習期間を一部5年間へ延長しようとしています。もはや、この本質課題から目をそらし、八方美人的に取り繕った議論は無意味です。建前は崩壊寸前です。こうして制度の歪んだ形が放置され矛盾を拡大させ続けた結果、現在の問題多発に至っているのですから。