社員の国籍は20カ国近く。「バックパッカー精神」あふれる留学生を世界的企業から引き抜かれるITエンジニアへ育成/㈱アレックスソリューションズ-前編

コラム&インタビュー

留学・海外経験者の「バックパッカー精神」はIT業界で重宝される

「彼らには海外経験を通して身につけた強みがあるのに評価してもらえなかったというコンプレックスがありますから、その思いをバネに、研修には本気で取り組みます。だから、まったくの未経験からでも実務で通用するレベルまでのスキルアップは十分可能でした。すると、今まで企業に門前払いされていた人たちが 『英語×IT』という希少価値の高い人材に生まれ変わるわけです。また、当社の社員は、必然的にバイタリティに溢れるタイプが多く、これがIT業界では異質なキャラクターとして重宝されることもわかりました。人と打ち解けるのが得意ですし、トラブルがあって、パニックに陥るような状況でも何とか乗り切る力も海外経験を通して養っていますから」

このように同社では決して『英語力』というスキルのみに注目して人材を募っているわけではない。同社の業務では、海外に積極的に飛び出していくバイタリティやさまざまな経験によって培われた人間的な力もすべて活かせる。同社では、これを求める人物像として「バックパッカー精神」と呼んでいる。単に「英語ができる人」ではなく、「留学経験・海外経験がある人」を募集し、グローバル化が進むIT企業が抱えるニーズとの理想的なマッチングを実現しているのだ。

ここ数年は、日本に留学したものの、その経験を活かす就職ができなかった外国人の採用も増やしている。また、スリランカでは、日本語を学ぶスリランカ人を現地採用。「島国であるスリランカの人々のコミュニケーションは日本人に近い」と大野代表。外国人採用に関しても企業間の競争が激しくなるなか、競合が集中するインドではなくスリランカに着目するあたりがアイデアマンの大野代表らしい。現在は社員の1割程度が外国籍。冒頭に掲げたように社員の国籍は20カ国近くとなり実に多様だ。

一般的には、このように外国籍社員が増えてくると、組織にとってはダイバーシティマネジメントが重要な課題になってくる。文化的背景や価値観が異なる人たちが集まることにより、組織の中心を占める日本人との齟齬や軋轢が生じやすいからだ。しかし、アレックスソリューションズにはそのような問題は特に起きていないという。

「当社の日本人社員はもともと海外経験を通して異なる文化や価値観を受け入れる素地はできています。常駐先で日本人社員と外国籍社員がチームを組むこともありますが、コミュニケーションはスムーズですね。海外にいるのと同じ感覚なので、彼らには自然なことなんです」

なお、組織としての一体感を醸成するために、月に一度、社員が本社に戻る「帰社ウィーク」を設けている。エンジニアを派遣する企業の多くは、帰社日を設けていても、1日で設定しているのが一般的で、その日が忙しい社員は参加できない。そのため、同社では5日間のうち都合の良い1日に帰社できるように工夫。20人程度の単位で、それぞれ英語を使ったゲームやランニング会などさまざまなイベントを通して社員同士の交流を図っている。また、年に3回は全員が集まる社員総会(上写真)を実施。常駐先での勤務がメインでも、社員同士が顔を合わせる機会は豊富だ。

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構成/伊藤敬太郎