「5つの躍進行動」の実践をバックアップする/石山恒貴氏  法政大学大学院政策創造研究科研究科長・教授

コラム&インタビュー


  ミドル・シニアに「躍進行動」の実践を促すため、企業にはどのような視点が必要になるでしょうか?

石山 支援施策として多いのは、やはりキャリア研修ですね。「躍進行動」をテーマにした研修も既に開発されています。研修を行う上で何より大切なのは、「成長」をメインテーマにすること。ミドル・シニア向けの研修というと、「定年後を見据えたライフプランニング」「経験の棚卸と活用」などを指南するものが一般的ですが、それだけをメインにしてしまうと、いわゆる「黄昏研修」に参加させられているような気持ちになり、ますます引退モードに拍車がかかってしまいます。

今、モチベーションが下がっているミドル・シニアのなかにも、成長意欲を持ち続けている方は少なからずいます。そのため、研修を行う際には、「残りの会社員生活をどう過ごすか」「経験をどう活用するか」という視点だけではなく、「40代、50代からさらにもう一段成長(躍進)するためにどうするか」という視点でプログラムを組み立てることが必要です。


  職場でミドル・シニアをマネジメントする管理職には、どういう対応が求められますか?

石山 研修でモチベーションが上がったのに、職場に戻ると活躍を期待されずにガッカリ…というケースはよくありますので、上司のマネジメントは非常に重要です。「躍進行動」には、その実践を後押しする「エンジン」と、押しとどめる「ブレーキ」があります。下図はそれぞれの項目を一覧にまとめたものですが、上司には、エンジン項目になる対応を増やし、ブレーキ項目になる対応を極力減らすようなマネジメントが求められます。

出典:株式会社パーソル総合研究所/法政大学 石山研究室「ミドル・シニアの躍進実態調査」


  「上司による社内調整」がブレーキ項目なのですね? 部下の立場からすれば、非常に有り難い対応のようにも感じるのですが。

石山 相手が若手であれば、事前に根回しをしてくれる上司の存在はとても心強く、有難いでしょう。しかし、経験・人脈ともに豊富なミドル・シニアが相手の場合、変に先回りされると、逆に「信用されていない」と感じて、プライドを傷つけてしまう。それによってモチベーションが下がり、「躍進行動」の実践にもブレーキがかかってしまうわけです。


  同じ対応でも、相手によって受け止め方が異なるということですね。管理職向けにミドル・シニアのマネジメント研修を実施する際には、このエンジン項目、ブレーキ項目に基づいてプログラムを構成すると効果的ではないでしょうか。

石山 即効性が期待できると思います。あともう一つ付け加えるなら、リフレクションの機会を設けることも有効です。リフレクションとは「内省」という意味で、仕事から一度離れて、自身の価値観や考え方、行動を客観的に振り返ることを指します。上司がこういった機会を意識的・定期的に作って、ミドル・シニアの話にじっくり耳を傾ける。また、その際には、上司側も自己開示して、互いに「やりたいこと」「得意なこと」を話しあう。そうやって相互理解を深めることが、マネジメント上のギャップ改善にもつながっていくと思います。