ミドル・シニア社員のキャリア自律支援を進めるために

コラム&インタビュー

ミドル・シニアを起点とした組織活性化・組織開発を考える

会社として、大局的・長期的に考えれば、ミドル・シニア層が活性化することは、組織として望ましいことです。ミドル・シニア問題は、組織にとって避けて通れない困難な課題である側面は否めません。しかし、長らく仕事の経験を積んできたミドル・シニア層がその力を発揮して積極的に組織に貢献することは、確実に組織力アップにつながるはずです。また、この世代が活性化し活躍する後ろ姿を若手・中堅世代が見ることによって、会社での自分達の将来像、ボジティブなキャリアの展望を描くことでき、優秀な人材の会社へのエンゲージメントや定着率を高めることにも結び付きます。

人事・人材育成担当者は、経営・幹部層にこうしたメリットを伝え、上層部を巻き込みながらミドル・シニア活躍支援のための本格的な仕組みづくりを進めることが考えられます。例えば、この世代が中心となった新規事業提案制度や社内ベンチャーの立ち上げなど、会社の成果や活性化に役立つプロジェクトを創設し、ミドル・シニアの力を大いに活用するのです。当該世代にとっては、自律的・主体的に自分の役割と仕事を創出し、周囲を巻き込み、成果・結果を出すという自己鍛錬・キャリア自律への本格的なトレーニングの場となります。また、企業サイドにとっては、厳しいビジネス環境の中で、起死回生のアイディアや新機軸事業が生まれるかもしれません。

もし、社内にたとえ一握りでもこうしたミドル・シニアの良きロールモデルが出てくれば、大いに評価して社内イベントや社内報などで周知し、組織内に伝播させる。そして、これに触発されて後に続く好事例が出てくる…。こうした好循環が回るようになれば、組織開発の仕組みとしても成功と言えるでしょう。

組織と個人が共にマインドセットとアクションを起こす

「ミドル・シニア問題」への対応は、ともすると当該世代の今後の身の処し方、働く心得に関する「マインドセット」の研修・セミナーに終始する場合があり、「黄昏研修」などと揶揄されがちです。しかし、大事なことは、これまでの会社への貢献部分を認め、当該世代の今後の仕事人生のビジョンづくりに寄り添うことでしょう。そして、「ウィン・ウィンの関係」で会社としての期待や、具体的な活躍の場を提供し、あるいは次のキャリアステージ模索への支援策に丁寧につなぎ、前向きに伴走していく姿勢が求められます。

その意味では、まず会社側が自らの心構えや行動準備を整えるマインドセットを果たし、そのうえでミドル・シニア層に対する啓発・研修等と支援策を導入することで、はじめて双方の思いとビジョンが噛み合い、ミドル・シニアのキャリア自律支援の歯車が好転し始めるのです。

前川 孝雄
(株)リクルートで「リクナビ」編集長等を経て、2008 年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に(株)FeelWorks設立。約400 社で「人が育つ現場」づくりを支援。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)他多数。前川孝雄の「はたらく論」(ブログ)随時更新中!