評価ではなくゴールセッティングとフィードバック。オープンコミュニケーションで、一人ひとりが才能を発揮できる/株式会社ユーザベースー後編

コラム&インタビュー

前川孝雄の対談後記:会社や上司がやる気を出させるのではなく、もともとのやる気を削がないことで、多様な才能は開花する

ユーザベースの組織運営の根っこは何より「経済情報で、世界を変える」というミッションにある。買収する会社に対しても、採用する人に対してもこのミッションへの共感度を重視するから、それぞれにやりたいこと(=人生のミッション)がある多様なメンバーが集まっても、組織として同じ方向を向くことができるのだと強く感じた。

そのためには、入ってからどう育てるかということよりも採用のフェーズが非常に大切になる。「この人なら自由にやってくれれば、会社のミッションに通ずる成果を挙げてくれる」と才能を認めた人材を採用しているから、7つのバリューの一つである「自由主義でいこう」を徹底できるのだろう。

もちろんそのためには風土醸成がカギを握る。単にミッションやバリューを掲げても、それらが浸透せず、絵に描いた餅になってしまっている企業も少なくないが、ユーザベースは、経営陣が率先してオープンコミュニケーションを実践する。それによってメンバー一人ひとりの納得感が培われていくのだろう。

「やる気がある人が集まっているのだから、会社がモチベートする必要はない」という言葉は非常に示唆的だ。多くの会社は社員のやる気を喚起するにはどうしたらいいかと頭を悩ませ、あの手この手を使う。しかし、人のマインドというのはそう簡単に外部からコントロールできるものではない。本当に大切なのは、やる気を出させるのではなく、もともとあるやる気を削がないということだ。

自由に動ける場でこそ、人は最大限に才能を発揮する。余計な口出しや強制をせず、自由に才能を発揮できる環境を創り出し、維持することこそが会社の役割なのだと、西野、宮原両氏は言う。もちろんはじめからプロフェッショナルかそれに近い人材が入社してくるユーザベースと、新卒を一から育てる日本の伝統的大手企業とは事情も違うだろう。しかし、一部の経営陣のみが意思決定するだけでは時代の変化に先んじることができない時代、ユーザベースの多様な人・才能を活かす方法に学ぶべき点は確実にあるはずだ。

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株式会社ユーザベース
「経済情報で、世界を変える」をミッションに、ソーシャル経済メディア「NewsPicks」、経済情報プラットフォーム「SPEEDA」など、7つのグループ会社を擁する急成長企業。創業は2008年。現代表取締役はそれぞれ創業メンバーである梅田優祐CEOと稲垣裕介COO。2016年、東京証券取引所マザーズ市場に上場。シンガポール、中国、香港、スリランカにもグループ会社を設け、米Quartz Media, Inc.を買収するなど、海外進出にも積極的に取り組んでいる。

構成/伊藤敬太郎