早期退職で失敗する人とは?~「定年=リタイア」ではない時代に、50歳から生き生きと働き続けるために~(前編)

コラム&インタビュー

《その①》やりたいことがない人

いま50代のバブル入社世代は、空前の売り手市場のなか複数の内定先から深く考えず就職先を決めた人もいることでしょう。入社後も配属、異動、転勤、昇進などキャリア形成は会社任せで、出世競争には一生懸命であったけれど、どこに進むか、何をすればよいかは会社依存だった人も少なくないはずです。改めて「あなたがやりたいことは何?」と問われると、答えられない人も散見されます。

しかし、会社に依存しない第二の職業人生を創り出す時に、やりたいことへの内側から湧き出るモチベーションがなければ、歩み出す心構えも方向も定まりません。自分の中に軸のないまま、「何となく」「先輩を真似て」「人気業界へ」といった転職や起業では、少しの躓きや一度の挫折でめげてしまい、転職を繰り返し落ちていく可能性が高いのです。客観的に考えるとわかると思いますが、実績は当然のこととして、仕事への思いを語れない中高年人材を進んで中途採用する企業があるでしょうか。キャリアビジョンなき退職は、流浪の始まりなのです。

《その➁》変化に対応できない人

大企業のミドルには一つの専門分野に長年携わってきた人も多いでしょう。打ち込んできた仕事に自信と誇りを持ち、その仕事を会社に評価されている間は幸いです。しかし、自分の専門領域に固執し、社内の他の仕事や会社全体の動き、社会・経済の動きや変化などに関心がなく視野狭窄に陥っているなら要注意。人間は変化を恐れ拒む傾向がありますが、中高年が古びてきた専門スキルにこだわり、変化への対応力がなく、抵抗感を持つようになると知命的です。

企業の拡大再生産の時代には、専門分野の分業体制で効率も上がりました。しかし、いまや大幅な事業再編で自分の仕事が部門ごとなくなる場合もあるでしょう。専門業務からの転換を命じられた時に、腐ってしまい辞めてしまってはいけません。50代からの転職は往々にして前職より規模の小さな企業で働くことになります。大企業から中小企業に転職すれば自ずと幅広い仕事を担うことが求められますし、独立起業すれば、あらゆる仕事を自分一人でこなす覚悟が必要です。変化の時代には、むしろ変化じたいを楽しみ、新たな状況や環境の中で貪欲に学ぶ姿勢が不可欠なのです。その準備のできていない早期退職はリスクが大きいのです。