女性活躍推進の本番はこれから (後編)トップメンターによる育成と女性リーダーネットワークづくりを

コラム&インタビュー

《提案その②》トップメンターの“師匠”による育成体制をつくる

以上の視点も踏まえた上で、ここからは具体的な育成の仕組みについて触れていきましょう。女性管理職層から部長職や役員などのトップリーダーを育成するための提案の第二は、女性の幹部候補に自社の役員クラスのトップメンター(助言指導役)をつけて、OJT(実地の個別支援)で育てる体制をつくることです。現在の経営層の大半を占める男性役員が“師匠”役として女性幹部を育て支援をしていく体制を作ることです。

日本企業の役員・部長職クラスは、ほぼ男性で占められているのが現状です。女性にとって社内に同性のロールモデルを見つけることは極めて難しいのが現実です。一方で、社外における女性管理職や役員の交流の場づくりは進んでおり、情報交換の場としては有効です。また社外のセミナーや研究会で一般的なマネジメントの型や先進事例を学ぶ機会もあるでしょう。しかし、自らの企業の社内事情に応じた知恵や、実際の組織人脈を活かす有効なアドバイスは得にくい場面もあるでしょう。

日本企業の役員会はまだまだ「男性村」で、ハイコンテクストな(文脈や行間が多い)コミュニケーション集団であり、いいか悪いかは別として、本当に大事なことは取締役会議の外で決まることもまだあるでしょう。そうした場や状況への対処も含め、経験と実力が豊富な内部メンター直伝の知恵と支援を受けながら、トップとしての経験知を磨くことが大切なのです。

《提案その③》女性の役員・管理職・リーダーのネットワークづくりに取り組む

提案の第三は、企業内での女性の役員・管理職や次世代リーダー、さらにはこの流れに共感する男性を含めた緩やかなネットワークづくりを支援し、面として女性のミドルリーダー・トップリーダー層を育成していくことです。

女性のリーダー・管理職候補層が次第に厚みを増してきたとはいえ、組織内ではまだ少数です。ことに部長職や役員となると一握りの存在です。そこで、女性リーダーや管理職・幹部を積極的に登用していく取り組みと並行して、彼女たち彼らが相互支援を行えるネットワークづくりの支援をしていくことが有効です。これは、フォーマルな固い組織ではなく、定期的に情報交換会や学習会を行うような緩やかなサークルのような形で、楽しみながら参加できるものがよいでしょう。

前述のような企業の枠を超えた女性リーダーのコミュニティ形成や交流も、視野を広げるためには有効です。一方で、女性幹部やリーダーが社内を動かしていくパワーを持ち、「男性村」によい意味で風穴を開けて本格的な女性活躍の波をつくるためには、女性リーダーを核とした勢力を面として育てあげ、定着させていくことも不可欠です。組織としては、ぜひこうした動きを支援していくことが望まれます。

前編に戻る

前川 孝雄
(株)リクルートで「リクナビ」編集長等を経て、2008 年に「人を大切に育て活かす社会づくりへの貢献」を志に(株)FeelWorks設立。約400 社で「人が育つ現場」づくりを支援。2017年に(株)働きがい創造研究所設立。著書は『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)他多数。前川孝雄の「はたらく論」(ブログ)随時更新中!