女性活躍推進の本番はこれから (後編)トップメンターによる育成と女性リーダーネットワークづくりを

コラム&インタビュー

《提案その①》トップリーダーへのマインド習得の機会をつくる

40~50代の女性リーダーや管理職には、とても真面目で組織内の人間関係に敏感な人が多いと感じます。それは自分自身のワークライフバランスを一生懸命コントロールしながら、仕事や人間関係でも人一倍の努力と苦労を重ねてリーダー役を務めてきた結果であり、優れた点だと思います。しかしそれ故にか、自分らしさを抑制して組織や上司に対して従順すぎる傾向がある人もいらっしゃいます。「男性村」のなかで頼れる一部の上司・幹部に仕えてきた結果、必要以上に上司の意向ばかり気にするようになるリスクもあります。部下から見ると、上ばかり気にするヒラメ上司と思われかねません。そこで、女性がもう一段ステージを上げて、組織のトップリーダーになるために身につけてほしい2つのマインドを提案したいと思います。これは女性トップリーダー育成にあたり、経営者や人事部門にも意識してほしい観点です。

(1)善きミッションのためには軋轢を恐れず自己主張する

トップリーダーたるもの、周囲(上下左右)を巻き込んで多くの人と組織を動かすことが求められます。そこに不可欠なのが、強い信念に基づくミッション(使命、目的)です。ただし、それは独善的ではなく、外向き〈顧客・社会貢献志向〉、前向き〈未来志向でポジティブ〉で、組織内外に魅力を放つものでなければなりません。この善きミッションを掲げたならば、それを実現するためのこだわりと自己主張を持つことです。自分の立場を守るためではなく、世のため人のための大儀のためには、たとえお世話になった上司と対立してでも、自分の言葉で信念を貫く強さが必要です。同時に、組織の上層部や上司のみを見ず、部下や後輩を慮り、その声に耳を傾け、現場の意見や知恵を大切にした組織づくりを心掛けることも大切です。

平成不況30年を経た今、日本企業には大きな変革が求められています。決して「女性だから」や「女性らしく」ではなく、これまで当たり前だった男性幹部中心の「会社村」の古い常識や感覚を客観的に見ることができ、新しい切り口でイノベーションを起こせるのは、後からやって来たニューリーダーなのです。その意味で、女性トップリーダーには善き力を発揮できる大きな可能性が期待できるのではないでしょうか。ぜひ、そうした心構えとミッションを磨くことに努めてほしいと思います。

(2)清濁併せ呑むしたたかさをもつ

部課長クラスを超えて、執行役員や取締役以上に昇進しダイナミックにリーダーシップを発揮するには、正しく真面目なだけではうまくいきません。社内外の政治力学を見定めながら、大義を実現するチームのパワーを強化する必要もあります。組織トップとの良好な関係はもちろん、上場企業であれば株主や世間の評価、時代の変化を察知して動く逞しさが必要なのです。自からの権力を拡大させ、したたかに活用していくのです。

スタンフォード大学のジェフリー・フェファー教授は著書『権力を握る人の法則』のなかで次のように語っています。「個人の評価に影響するのは、仕事の成果よりも上司との関係性である」「あなたに権力があり、それを行使する意志もあるとわかれば、大方の人は味方に回る」「ほとんどすべての組織では、予算と人事に口を出せる人が権力を持つことになる」…。あまり心地よい言葉には感じないかもしれませんが、残念ながらいずれも大方の真実をついています。私は、権力をとることが目的化し、そのために権謀術数を駆使することには賛同しませんが、善きミッションを実現し、大志を成すためには、清濁併せ呑むしたたかさをもつことも大切なのです。