なぜ、彼らは銀行を去ったのか?~実際に銀行を離職した若手社員の声から早期離職防止のヒントをつかむ~

コラム&インタビュー

経営者に喜んでもらえ、強いやりがいを感じた入行当時

現在、人材サービス企業に勤める山本雄太氏(仮名)は、もともと地方銀行の出身だ。山本氏に新卒当時の志望理由を尋ねると、「地方銀行は経営者を相手に仕事ができる。そのスピード感やスケールに魅力を感じた」と語ってくれた。入行後、地域の中小企業の経営者に対する事業支援を任され、まさに期待通りの仕事ができたことから、強くやりがいを感じていたと言う。

「印象に残っているのは、ある経営者が営む大型飲食モールの立ち上げのプロジェクト支援です。計画段階から参加し、地道に支援を続けた結果、プロジェクトは大成功。その経営者の方も大変喜んでくれ、メインバンクとして支援を任せてくださるようになりました。さらに、他の経営者の方を多数紹介してくれ、半期で20件ほどの新規顧客獲得にも成功しました」

新規顧客の平均獲得数は半期で1~2件程度とのことなので、山本氏の成果の大きさがうかがえる。しかし、それからしばらくして事件が起きる。

「お客さま」ではなく「銀行」中心の考え方にやる気が削がれる

「モール立ち上げ後、銀行が継続融資を許可しなかったんです。納得できず上司に説明を求めても、『返済できなくなる可能性がある』との一点張り。オープンを控えたモールは、ちょうど大々的な広告を打つ準備をしているところでした。当初の融資計画の中にも、その予算は含まれていたはずなのに。お客様の事業の大切な局面で力になることができず、憤りさえ感じました」

その出来事を契機に、山本氏の銀行に対する不信感が募っていく。さらに、行内を見渡せば、目標数字に届かなかった行員に対し、管理職から「無理にでも借りさせろ」「絶対に返させるな」などという言葉が平気で飛び交っていたと言う。

「お客様目線が欠如した、銀行中心の考え方を目の当たりにするたびに、どんどん仕事へのやる気が削がれていきました。周りの行員たちも『信頼して任せてくれているお客さまに申し訳ない』という気持ちでいっぱいだったと思います」