55歳でキャリア官僚からNPO代表に。「やりたいこと」はアクションを起こすことで見えてくる/NPO法人農商工連携サポートセンター代表理事 大塚洋一郎氏

コラム&インタビュー

  ご自身の経験をふまえ、シニアの方々が充実したセカンドキャリアを歩むために重要なことは何だと思われますか?

大塚 何よりも大切で最も難しいのは、「自分が本当にやりたいことは何か」を考えることではないでしょうか。ただ、これは自分ひとりであれこれ思い悩んでいるだけでは、なかなか見えてきません。そのため、何かしらのアクションを起こす必要があると思います。

アクションを起こすことで人との出会いが生まれ、新しい関係性ができるなかで見えてくるものがある。自分のアクションによって、周囲の人からどんな反応が返ってくるか。それを見て、自分がどう感じるか。そのときに心の動きで気付くことがあるんじゃないかと。私自身、役所にいた頃は自分が農業に関わるなんて考えもしていませんでした。でも、開墾プログラムで刺激を受け、大きく心を動かされた。決して論理的に考えて決めたわけではなく、アクションを起こしてみた結果なんです。

  とはいえ、生活のことを考えるとハードルが上がりますし、そもそもどんなアクションを起こせばいいかわからないという人も少なくないように思います。

大塚 その気持ちはよくわかります。私も「これで本当にやっていけるのだろうか」と随分悶々としましたから(笑)。リスクを取ることに不安があるなら、今の勤め先を辞める必要はないと思います。勤め先で働きながら、起こせるアクションもたくさんあるでしょうし、勤め先のなかで新しいことにチャレンジしてみたっていい。

また、「やりたいこと」がわからなければ、まずは自分に「できること」で、新しいコミュニティに飛び込んでみるのも一つです。そこでの出会いや体験から刺激や気付きを得て、「やりたいこと」や「すべきこと」が見えてくるかもしれません。

  自分ができる範囲の小さなことでもいいので、とにかく行動することが大切ということですね。

大塚 そうですね。私もまだまだ新しいアクションを起こしていくつもりです。70歳になったら、自分で米・麦・大豆を生産して、それを使った事業を起こしたいと考えています。その第一歩として、埼玉県に小さな田んぼを借りて、稲作を始めたんです。今後、どれくらいの収穫が見込めて、どんな事業ができるかシミュレーションを始めているのですが、今からとてもワクワクしています。

大塚氏の起業までのエピソードをまとめた1冊『そうだ、トマトを植えてみよう!』