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副業促進をどう捉えるか?(前編)~お金を稼ぐ「副業」思考ではなく、キャリアビジョンを実現する 「福業」思考を持とう~/編集長・前川孝雄の「人が育つ現場論」

ミドル・シニアはキャリアビジョン再発見の場に~「カッパの呪縛」からの解放

新卒で入社した会社で長く働いてきたミドル・シニア層にとっては、これまで自分のキャリアビジョンを深く考える必然がなかったため、明確なビジョンを描き直すことは容易ではありません。そこで副業が有効になります。組織の外に出て、多様な人や新たな仕事と出会うなかで、自分自身で気づかなかった自分の強みや持ち味が見え、また新たな関心が生まれる可能性があるからです。今後のキャリアビジョンを描き直すきっかけを得ることができるのです。

以前、人材育成ジャーナルの記事で紹介した、IT企業サイボウスの青野慶久社長が推奨される「副業」ならぬ「複業」のお話に登場した社員の事例が参考になります。青野社長の元に某大手銀行から転職してきた50代のベテラン社員の事例です。彼は大変優秀で指示された仕事は完璧にこなします。しかし、大企業での働き方が染み付いていて上からの役割や仕事の指示がないと何をしていいかわからない。そこで、青野社長は一度会社を離れ「複業」をするよう提案しました。彼は自分が会社に必要がないと宣告されたと勘違いし酷く落ち込みます。しかし、社長命令なので、何とか自分のやりたいこと、やれる仕事は何かを一生懸命内省し、見つける努力を行いました。その結果、社会的マイノリティーを支援する非営利活動の支援にやりがいを見出し、生き生きと働くようになった。その分野での有名人にまで成長でき、やがて会社にも還元されることも視野に入ってきた、というお話しです。青野社長は、これを「カッパ(組織という虚構)の呪縛からの解放」と表現されています。

経済的・精神的なセーフティーネットを得る

やりがいと手応えのある副業を持って働くことができたならば、それは結果として2つのセーフティーネットを得ることにつながります。

その一つは、経済的なセーフティーネットです。私は副収入を主目的とする副業は推奨しないと述べました。ただし、自分のキャリアビジョンを実現していく一環としての副業が定着し、その結果として複数の収入源が得られることは良いことです。一つの職場で収入減や失職の恐れがあっても他で補うことができれば、経済的不安が軽減されるからです。自分の市場価値が複数の仕事で可視化されていて、自分の力で稼ぐ実感がもてることは、心強いことでしょう。

もう一つは、精神的なセーフティーネットです。一つの職場にしか所属していないと、その職場の上司の評価や同僚との人間関係に一喜一憂することになります。自己効力感を感じにくくなることもあるでしょう。しかし人間が行う評価には浮き沈みもありますし、企業を取り巻く環境や景気動向に拠る場合もあります。複数の仕事を持っていれば、一つの職場で業績や評価が不調でも、他で評価される可能性もあり、気持ちを楽に保てます。また、一社に依存していないため、心を病むほど苦しむ位であれば、離職の選択もしやすいのです。こうして考えていくと、お金を稼ぐための副業というよりは、幸福をつかむための「福業」ととらえて、自ら会社の枠を超えて働くきっかけにしていきたいものです。

以上、副業を個人の立場から前向きに捉え活用することによって、自らのキャリアビジョンを実現していくための有力な機会になることを見てきました。次回の【後編】では、経営・人事の側で副業をどのように促進していくことが望まれるか、その視点と方法について見ていきたいと思います。(後編に続く)

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