2019年度採用からあえて「留年採用」実施。マイナスと思われる要素に注目したわけは?/㈱東急エージェンシー 人事・総務局 人事企画部 仲野 大輔氏-後編

コラム&インタビュー

個々のキャリアプランの多様化に応じて育成も個別対応に

前川:最近は経団連などのメッセージを見ていても、グローバル競争をする大手企業は日本的なメンバーシップ型雇用から欧米型のジョブ型雇用へと移行しようとしている意図を感じます。つまり採用してからじっくり育てるのではなく、すぐに活躍できる即戦力を求めるようになってきていますよね。ただ、その点をオブラートに包みすぎて学生にはうまく伝わっていないのかなとも思っているのですが。そういったなかでの職種別採用はジョブ型雇用を意識してという面も大きいのですか?


仲野: 個人的な意見ではありますが、私たちのビジネスはプロフェッショナルサービス業なので、専門性のある人の存在自体が付加価値になっています。より複雑化していく環境のなかで付加価値を上げていくならば、より専門性の高い人材を多く抱えていく、ジョブ型に移行していく流れになるのかなと感じています。将来的にそうなるのであれば、学生のうちからそういう志向性のある学生を採用しておくべきなのかなという意図も、職種別採用を導入した理由の一つではありますね。ただし、組織としては純然たる日本企業という一面もありますし、職種別採用で入っても入社後に他の職種に魅力を感じてそちらに移りたいというケースも出てくるでしょうから、柔軟に対応する必要があると思います。ですから、メンバーシップ型かジョブ型かで明確に割り切れるものでもないですね。

前川:そうなると、一律のコースを歩んで行くわけではないということになりますから、入社後の育成というところは多様化が求められますね。

仲野:そうですね。育成に関しては個別対応ということが大切になってくると思います。そもそも当社の中で求められる機能として、非常にさまざまな職種・スキルがあります。また、インターネットの普及に伴う環境変化もあって、当社の事業領域は拡大する一方ですから、一律の方法で人を育てていくというのは状況にそぐわない面があるんです。一方、個人の視点に立ち返ると、それぞれがなりたい姿も多様化しています。そうなると、それにきめ細かく対応した育成のメニューをどれだけ幅広く用意できるかが重要になると個人的には考えているんです。

前川:今日、議論させていただいたように今、日本の企業は人材の採用・育成に関して大きな過渡期にあります。御社の「留年採用」のような取り組みも、単なる話題作りということでなく、今後多様化していく採用の先駆的な事例として他社にもインパクトを与えるものになっていると感じますね。

仲野:多様化していくというのはまさにそうですね。今まで常識だった新卒一括採用というかたちも残ってはいくでしょうが、それがすべてではなくなっていくでしょうから。先のことはなかなか予測がつきませんが、そこで各企業がどのような考え方で人を採用していくかということはますます大切になってくると思います。

前川:留年採用は今後も続けていかれるのですか?

仲野:「帰ってきた留年採用」と銘打って2020年度採用でも実施します。

前川:さすが、いいキャッチフレーズですね(笑)