2019年度採用からあえて「留年採用」実施。マイナスと思われる要素に注目したわけは?/㈱東急エージェンシー 人事・総務局 人事企画部 仲野 大輔氏-後編

コラム&インタビュー

業務効率化・生産性向上の気運が高まり、働く人たちの多様化も進む現在。急速に変化する社会環境のなか、企業ではどのように人を育てていくべきなのでしょうか?本連載では、人材育成企業FeelWorks代表取締役の前川孝雄が、先進的な人材育成の取り組みをしている企業のトップと「これからの人材育成」をテーマに対談していきます。第3回となる今回取り上げるのは、2019年度の新卒採用において「留年採用」というユニークな制度を導入した株式会社東急エージェンシー。人事・総務局 人事企画部の仲野大輔さんに、留年採用を中心に、同社の採用・育成の考え方や取り組みに関するお話をお聞きしました。

学生の意識の変化に対応して職種別採用を導入

前川:御社は職種別採用を導入していらっしゃいますね。

仲野:はい。2017年度の採用から、応募時に、「営業・メディア職コース」「クリエイティブ職コース」「プランニング職コース」など、自分の希望する職種に応じたコースを選べる職種別採用を実施しています。

前川:それはどのような経緯から始められたんですか?

仲野:単に「広告会社に入りたい」というだけではなく、「広告会社に入ってこういう仕事がやりたい」というふうにキャリアビジョンが明確になっている学生が増えてきたことが大きいですね。そういった学生を総合職として採用して、結果として意にそぐわない配属になってしまい、本人のポテンシャルが発揮できないという事態はできるだけ避けたいですから。ビジョンがあって、自分のストロングポイントもわかっていて、それが会社にとっても価値につながるということであれば、最初からそれに合致した道を用意したほうがお互いにとっていいだろうと。メーカーなどでは当たり前にやっていることですが、広告会社では比較的珍しい取り組みなので、だからこそあえてやってみようということでチャレンジしました。

前川:総合職採用も残しているのですか?

仲野:はい。必ずしもキャリアビジョンが明確な学生ばかりではないですからね。応募時には特に限定せず、入社後に研修を経て希望を出してもらって配属を決める総合職採用も残しています。

前川:なるほど、どちらかに振ってしまうのではなく、個々の学生が自分に合ったほうを選べるということですね。

仲野:そうです。それと、もう一つの背景としては、当社は広告業界で6番目の会社で、上位には非常にブランド力の強い企業もありますから、そういうなかで東急エージェンシーを選んでもらうための戦略という意味合いもあります。

前川:確かに明確なキャリアビジョンがある学生にとっては「東急エージェンシーなら自分のやりたい仕事ができる」というのは大きな魅力ですね。結果として採用競争力は上がったのでしょうか?

仲野:それを理由に選んでくれた学生もいるので、部分的には上がっていると思います。