「働きやすさ整備」で離職率4%以下に。でも目指すは「心の余白」づくり。本気でぶつかり合う風土を醸成する社長自らの実践とは/さくらインターネット㈱ 代表取締役社長 田中 邦裕氏-後編

コラム&インタビュー

対談後記:大切なのは経営者自身が率先垂範で変化し、行動すること。「働きやすさ整備」先行による課題を素直に認め、「働きがい」を目指すからこそ、企業は成長する。

田中社長との対談で改めて強く感じたことは「トップから変わる」ことの重要性だ。時代の変化を感じ、組織が変わることの必要性を感じてはいても、上から「変われ」と号令をかけるだけで、自分自身が変化し、成長することができない経営者は多い。しかし、社員は常に経営者を見ている。経営者が変わらない限り、組織が変わることはない。

いいと思ったらまずは自分がやる。田中社長のやり方はある意味で非常にシンプルだ。そして社長自身が率先垂範して進めてきた改革の成果は数字にもはっきり表れており、さくらインターネット売上高は、2014年3月期の100億円から、2019年3月期には194億円(1月時点の修正業績予想)にまで伸びている。

社員が安心して、「余白」をもって働くことができる環境を整備することで、個人もチームも成長し、結果として会社も成長する。この「余白」や「心理的安全性」がさくらインターネットの改革のキーワードだが、そのぶん、働く人たちには自律と責任が求められる。そして、心理的安全性を確保したうでで、厳しいことを言い合うコミュニケーションが求められる。田中社長の言葉通り、「働きやすさ」の整備はあくまで改革の片輪にすぎない。「働きがい」をも追求することによってはじめて人が育つ組織風土が醸成されていく。この難しい課題に同社は取り組み続けている。

ただし、眉間にしわを寄せて改革を進めようとしてもうまくはいかない。「楽しむ」「機嫌よくいる」といったことの大切さも、この対談を通して改めて実感したことの一つだ。

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さくらインターネット株式会社
1996年、現社長の田中邦裕氏が創業。本社は大阪府大阪市。ほかに東京、北海道、福岡に拠点をもつ。社員数は連結 563名 (2018年3月末)。石狩データセンターをはじめ、自社で大規模なインフラを保有し、ホスティングサーバを中心とするデータセンター事業やインターネットサービス事業に取り組む。2005年に東証マザーズ上場、2015年に上場市場を東証一部に変更。2016年に、働き方改革推進のため、「さぶりこ(Sakura Business and Life Co-Creationの頭文字が由来)」と総称する、勤務時間の短縮、有給休暇の倍増、1日単位から利用できるテレワーク制度、パラレルキャリアの支援などの独自制度を導入。2018年からは、東京勤務の社員を対象に、他拠点への自由な転勤を認める「さぶりこ Xターン」を開始。

構成/伊藤敬太郎