外国人材の職場定着を図るマネジメントのポイントとは?/外国人材コンサルタント 千葉祐大氏

コラム&インタビュー

「発展空間」を可視化し、働き続けるメリットを感じさせる

   外国人材が定着しない原因としてもう一つ、「キャリアパス」の問題を挙げていましたが、これはどういうことなのでしょうか?

外国人材は「ジョブホッピングを繰り返しながら、ステップアップしていく」というキャリア観が基本ですから、そもそも企業に対する帰属意識が高くありません。そのため、「この会社でこれくらい成長(スキルアップや昇進などが)できる」という明るいキャリアパスが見えなければ、すぐにでも転職活動を始めてしまいます。

中国ではこのようなキャリアパスのことを「発展空間」と呼び、「発展空間」がその会社で働き続ける最大の動機付けになります。この考え方は中国人に限ったことではなく、他のアジア諸国の人材もキャリアパスにはやたらこだわります。「長く働いていればいいことあるよ」といった曖昧な将来像を示しても彼らの心にはまったく響きませんし、「石の上にも三年」なんて考えも一切通用しません。

大切なのは、ステップアップの可能性を具体的なレベルで描けるかどうか。外国人材の定着を図るためには、働き続けた先にあるメリットをできるだけ明確に可視化して示すことが必要です。

   日々のコミュニケーションと将来のキャリアパス。外国人材の定着と戦力化に向けて、企業はこの2点に焦点を当てた取り組みが求められるわけですね。

今回お話したこと以外にも、注意すべきポイントはたくさんありますが、ここではとてもすべてご紹介しきれませんから、詳しくは私の最新刊『異文化理解の問題地図』(技術評論社)に譲らせていただきます。この本では、異文化マネジメントの「あるある事象」に対し、原因分析を徹底的に行ったうえで、具体的な解決策を提示しています。これまでも異文化マネジメントに関する書籍はたくさん出版されていますが、その多くは日本人が外国に駐在する場面を想定して書かれたものでした。しかし、この本はその逆。日本国内における外国人材のマネジメントについて深く掘り下げて解説したものであり、そこに価値があると考えています。外国人材の採用・育成・定着に課題を感じている方はぜひご一読ください。